人事労務2022/12/05

ワールドカップと組織人材

論点

市場が成熟した変革の時代おいては、予測できない事態の発生や変化のスピードが速く、従来のやり方に固執することでは事業継続が困難となる可能性がある。短期における商品・サービスの差別化による競争力に加え、長期における組織人材においても差別化による競争力が求められる。なぜならば、事業の創造性を高めるのは人材の力の総和だからである。そのような相識人材を創るためには共通の目的・理想実現の意識を持ち、すべての従業員のベクトルを合わせることが重要となる。

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白熱するワールドカップ

この度は、数あるサイトの名から弊社のサイトを訪問して頂きまして誠にありがとうございます。
更新後初めての記事投稿については、ワールドカップと企業組織論について簡単にお伝えしたいと思います。

世界の各地域の予選を勝ち抜いてきた国と国が、サッカーを通じて激しい戦いを繰り広げるワールドカップ。世界で最も視聴者が多いといわれる 世界最大の祭典は、やはり独自の特徴を持った国と国がその威信をかけ、ドラマチックな展開もある白熱した真剣勝負に魅力があるのでしょう。 日本代表も、奇跡の快進撃を続け、台風の目となってこの大会を面白くしてくれています。

各国の代表チームの特徴は、面白いぐらいに異なります。これは地域の差、国民性、その価値観、伝統などを反映し、それを強みとして戦います。サッカーに詳しくなくてもその違いははっきりとわかります。そしてその特徴は時に大きな強みとなって勝利に貢献します。グローバル化が進み、ITが進化し、地球の同一化が進む中においても多様性を維持しています。

企業組織人材の独自性

この独自性は、そのまま企業にもあてはまります。企業の場合は、組織文化や組織風土と言われものです。これは経営者の経営理念をベースにそこに集まる人により醸成されてくるものですが、短期的というよりは長期的な時間の経過を伴ってその特徴を表してきます。 そしてそこには過去の成功体験や危機的状況における行動の結果や経験などにより、大きな影響を受けます。

そしてそれは、いわゆる「空気」となってその会社を覆いますが、当事者にはそれらは当たり前のもので、内部からは認識しづらいものとなることが多いのです。これは企業訪問だけではそれほどの違いを認識できなくても、転職等でその企業の構成員となった時に、誰しもがその違いをはっきりと認識できます。 そしてその違いー独自性ーが、企業の強みでもあり、弱みとなるケースが多いのです。 ワールドカップのように直接はっきりとした形で、示されることはないのですか、企業間競争においてはその独自性が間違いなく競争力に影響しています。

共通する強い企業組織人材の特徴

それでは、独自性をもつ強い企業組織人材の特徴にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは特に日系企業について述べます。

  • 事業創造性が高い
  • 規律があり、自己統制が取れている
  • 事業推進スピードが高い
  • 危機に対する柔軟性
  • 自己学習による知識の集積
  • 内部からの自己変革
  • 改善、提案の活性化
  • 意思疎通の円滑化
  • 自己犠牲も厭わない協働体制
  • 思いやり助け合いの風土
  • 自ら考え動く人材
  • 自己の成長に意欲的な人材
  • 簡単に諦めない粘り強い姿勢

共通する弱い組織人材の特徴

弱い組織人材はほとんどそのまま強い組織人材の裏返しですが、顕著な例は以下となります。

  • 停滞感、閉塞感
  • 密室経営的な風通しの悪さ
  • 主観的・属人的な組織運営
  • 事なかれ主義
  • 社員の顔色をうかがい、社内の空気による判断行動
  • 弱いものを叩く
  • 自己保身の判断基準

強い組織人材の副次効果

昨今ではここまではっきりと差がつくことがなくなってきました。なぜなら弱い組織人材の企業は当然ながら淘汰されていくからです。今後は、強い組織人材の企業でもその強い組織人材を生み出すためのモチベーションが重要となります。

特に人材の獲得競争は大きな企業間格差を生み出すと想定されます。強い組織人材を実現している企業は社員がイキイキとしているため、企業の魅力は高まります。さらなる好循環を生み出し、企業の成長発展につながります。 ただ強い組織人材は一朝一夕に実現できるものではなく、長期的な視点における実現のための取り組みこそが重要です。

日本サッカーから日本企業の組織を考える

ワールドカップに話を戻してみれば、まさに現在の日本代表はこの日本的な組織人材の強さを実現し、それを強みとしているからこそ競争力があるのではと考えられます。本来持つ日本人的な勤勉さや、チームのためにという自己犠牲、伝統の継承、先人たちの想いを引き継ぐなどの日本的な良さをベースとして、チーム一丸となり強みとして生かしているからこそ、個で勝る強国にも打ち勝っているのではないでしょうか。

従来の日本的価値観を体現することが差別化要因となり、競争力を高める。昨今はグローバル化やITの進化において日本的な良さよりは、グローバルスタンダートへの傾倒が強くなっていますが、本来ビジネスにおける競争においては差別化が重要なファクターとなります。 それは敗戦後、行動経済成長を経て先進国となったことに日本型経営の独自性による寄与があったことが証明しています。それは欧米企業が日本型経営の良さを認め取り入れてきたことが証明しています。

理想の現実のための目的意識の統一と一体感

そしてこの強い組織人材を作るために、構成員の目的意識統一、すなわちベクトル合わせが重要となります。これは利益増や競争相手に打ち勝つということでは弱く、経営理念や理想の実現、利他の精神などがベースとなった時強大な力を発揮します。そしてこれにチャレンジする気持ちが加わった時、強い団結力と一体感を生み出します。そして全員が目的達成のために期待以上の力を発揮します。

これは公共的な目的が自分の目的と合致した時に、特に大きな力を発揮します。例えば、敗戦後から高度経済成長にかけて日本企業が強くなったのは、経営者や社員が、敗戦から立ち上がり、豊かな生活という理想の実現を追求したことも大きな要因でしょう。そして物質的に大いに満たされた後、道筋を見失っていったのかもしれません。そして現在は物質的なものよりも、むしろ精神的なものがより一層求められるようになってきています。

とはいえ回顧主義、精神論や古いものにしがみつくことに陥るのではなく、自らの良さをベースに新たなものを取り入れながら独自性を持って進化向上していく科学的なチャレンジも当然に重要です。そのためには自らの独自性を認識することから始めなければなりません。

弛まぬ努力と強い信念を持ち続け、チャレンジを重ね進化してきた日本のサッカーに最高の結果がもたされんことを。